2008年11月28日金曜日

古きものと新しきもの

最近、耐震改修の問い合わせが多い。

ただ、現状行われている耐震改修は、どうしてもとってつけたようなブレースを追加し、確かに耐震性能は上がるのでしょうが、美観や使い勝手に支障をきたし、内部の窓から見えるブレースは圧迫感を与え、空間の質も落としているような気がします。


たしかに、今ある構造に最小限のコストと工期でやろうと思えば、ブレースを付け足したり、耐震壁を打ちましたりするのが手っ取り早い方法で、建築基準法上も面積が変わらなければ何の申請も不要です。(計画の認定が必要な特定建築物を除く)


オフィスビルのように、使用しながら改修する必要のあるものはやはり前述の方法をとらざるを得ないこともあるものの、住宅では耐震壁の増加は即使用上の問題が生じるし、通風・採光を好むこの地域の人たちには受け入れられにくいのが現状です。


現在設計が大詰めの計画で、古民家の改築がありますが、これは古民家特有の田の字型平面と高い解放性をそのままに、耐震性能を上げるために周囲に鉄骨で増築し、その鉄骨部分によって地震力に抵抗する構成としています。
このような一体とした増築は、既存部分まで現行法規に合わせる必要がでてくるため、工学的には問題が無くても法規的に問題となりそうな部分があるため、主事によっては難色を示されることもありますが、担当の主事は今の所「古きよき物を残しつつ、時代に合わせた新しき物によって古き物を生かす」と言った考え方に理解をしていただいているようで、事前協議では好意的な判断をしていただいています。
この地域特有の?結婚したら実家で親と同居みたいな文化のあるところでは、愛着のある古い家を好む親世代と、現代的な家に住みたい子世代が共に暮らす家の需要は潜在的に多いと見られ、今回の方法は古い部分の耐震性能をも上げることから、単に「はなれ」を造るより良いと思います。

今後しばらくこの計画をUPしていこうと思います。

2008年11月7日金曜日

カオス その2

前回視察に行った工場の社長と打合せを行いました。

社長は耐震に関しての基礎知識をお持ちのようで、耐震診断・耐震改修を建築基準法・耐震改修促進法に従って行なおうとすることが困難なことを理解されており、今回の耐震改修に関しては、構造部分に関しては少なくとも震度6弱レベルで倒壊しない程度の耐震性能を持たせたいとの事でした。

たしかに、既存不適格建物を所有する一般の方からすると、なるべくローコストで大きな変更無く、必要な部分に補強することによって地震に対する脅威を低減したいというのが本音でしょう。
しかし、構造のエンジニアとしては、どのような補強を行ってどれだけ耐震強度があがったということを、第3者の評価をつけて説明したほうが後で問題になりにくいし、そもそも法令順守を要求される時代に1級建築士が実際に耐震改修促進法の計画の認定がとれるかどうかわからない(やむを得ないと認められる不適格事項になるかどうかわからないところがある)設計を行って工事をしてしまうのもどうかという問題もあるので、話の落としどころをどうするか迷うところです。

ただ、一方で社員を守るために法律はともかく、早急に危険建物の補強を行いたいという施主を無視するのも、エンジニアとしてどうかと思うので、恐らくこの仕事を受けると思いますが、相当苦労しそうです。